本記事では、FP3級の出題範囲である「公的年金の給付」についてまとめていきます。
老齢給付① 老齢基礎年金
老齢基礎年金
老齢基礎年金は、受給資格期間が10年以上(平成29年7月31日以前は25年以上)の人が65歳以上になった時から、受け取ることが出来ます。
受給資格期間
受給資格期間とは、老齢基礎年金を受け取るために満たされなければいけない期間をいいます。期間は3つに分けられます。
保険料納付済期間
被保険者として保険料を納付した期間及び、産前産後期間の保険料を免除された期間をいいます。
保険料免除期間
法廷免除や学生納付特例制度などで、保険料を免除された期間をいいます。
合算対象期間(カラ期間)
受給資格期間には反映されるが、実際の年金の額には反映されない期間をいいます。かつて年金が強制ではなく任意加入制度だったときに、加入しなかった期間です。
老齢基礎年金の年金額
老齢基礎年金の年金額(年額)は780,100円(平成31年度)です。ただし免除期間等がある人はこの金額よりも少なくなります。また端数処理は1円未満を四捨五入します。
老齢基礎年金の繰上げ受給と繰下げ受給
繰上げ受給とは、65歳よりも早く(60から64歳までに)年金を受給することをいい、繰下げ受給は65歳よりも遅く(66から70歳までに)受給を開始することをいいます。
繰上げ受給は、繰り上げた月数×0.5%が年金額から減額されます。
繰下げ受給は、繰り下げた月数×0.7%が年金額に加算されます。
付加年金
付加年金とは、第1号被保険者のみに制度で、任意で月額400円を国民年金保険料に上乗せして納付することによって、「付加年金の納付月数×200円」が老齢基礎年金に加算されます。なお、付加年金と国民年金基金(後述)との併用はできません。
老齢給付② 老齢厚生年金
老齢厚生年金
厚生年金から支給される老齢給付の内、60から64歳までに支給される老齢給付を特別給付の老齢厚生年金、65歳以上に支給される老齢給付を老齢厚生年金といいます。
特別支給の老齢厚生年金は、定額部分(加入期間に応じた金額)と報酬比例部分(在職時の報酬に比例した金額)に分かれます。
受給要件
特別支給の老齢厚生年金の受給要件は、厚生年金の加入期間が1年以上であることです。
老齢厚生年金の受給要件は、 厚生年金の加入期間が1ヶ月以上であることです。
特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢の引上げ
老齢基礎年金の支給年齢は65歳ですが、かつては60歳でした。この65歳への引上げに伴う混乱を緩和させるために、特別支給の老齢厚生年金が存在します。
そのため、 特別支給の老齢厚生年金 は段階的に引き上げられ、最終的には65歳からの老齢厚生年金のみになります。
なお、女性は男性より5年遅れで引き上げられます。
年金額
特別支給の老齢厚生年金の年金額
特別支給の老齢厚生年金の年金額は、定額部分と報酬比例部分を合算した金額となります。なお、年金受給者に、一定の要件を満たした配偶者(65歳未満)または子(18歳以下)がいる場合には、加給年金が加算されます。
65歳以上の老齢厚生年金の年金
65歳以上に達すると、それまでの定額部分が老齢基礎年金に、報酬比例部分が老齢厚生年金に切り替わります。しかし当面の間、定額部分の額のほうが、老齢基礎年金の額よりも大きいため、その減少分が経過的加算として補われます。
老齢厚生年金の繰上げ受給と繰下げ受給
老齢厚生年金の受給開始年齢は原則として65歳ですが、繰上げ受給や繰下げ受給もできます。
加給年金
加給年金とは、年金の家族手当のようなもので、厚生年金の加入期間が20年以上の人に、配偶者または子がある場合に、65歳以降の老齢厚生年金の支給開始時から支給される年金をいいます。
振替加算
上記の加給年金は、配偶者が65歳以上に到達すると支給が停止し、その代わりに配偶者の成年月日に応じた金額が配偶者の老齢基礎年金に加算されます。これを振替加算といいます。
在職老齢年金
在職老齢年金とは、60歳以降も企業で働く場合の老齢厚生年金をいい、60歳以降に会社等から受け取る給与等の金額に応じて老齢厚生年金の額が減額(支給停止)されます。減額される年金額は年齢のよって異なります。
- 60~64歳
給与等+年金月額>28万円のとき年金額が減額調整されます。
- 65~69歳
給与等+年金月額>47万円のとき年金額が減額調整されます 。ただし老齢基礎年金は減額されません。
- 70歳以降
65~69歳と同じですが、年金保険料の納付はありません。
離婚時の年金分割制度
平成19年4月以降に離婚した場合、夫婦間の合意により、婚姻期間中の厚生年金を分割することができます。分割割合は夫婦で決めることができ、上限は2分の1となります。また平成20年5月以降に離婚した場合、夫婦間の合意がなくても、平成20年4月以降の第3号被保険者期間について、第2号被保険者の厚生年金の2分の1を分割することが出来ます。
障害給付
病気やケガが原因で障碍者となった場合で、一定の要件を満たしたときは、障害年金や障害手当金を受け取ることが出来ます。障害給付には、国民年金の障害基礎年金と厚生年金の障害厚生年金があります。
障害基礎年金
障害基礎年金は1級と2級があります。
受給要件
- 初診日に国民年金の被保険者であること
- 障害認定日に障害等級1級、2級に該当すること
保険料納付要件
原則、保険料納付済期間+保険料免除期間が全被保険者期間の2/3以上になることが要件です。
特例として、原則の要件を満たさない人は、直近1年間に保険料の滞納がなければ大丈夫です。
障害基礎年金額
- 1級
780,100円×1.25倍+子の加算額
- 2級
780.100円+子の加算額
障害厚生年金
障害厚生年金には1級、2級、3級と障害手当金があります。
受給要件
- 初診日に厚生年金保険の被保険者であること
- 障害認定日に障害等級1級、2級、3級に該当すること
保険料納付要件
障害基礎年金の場合と同じです。
障害厚生年金額
報酬比例部分の計算式をAとします。
- 1級
A×1.25倍+配偶者加給年金額
- 2級
A+配偶者加給年金額
- 3級
A
- 障害手当金
A×2倍
遺族給付
被保険者または被保険者であった人が死亡した場合の、遺族の生活保障として遺族給付があります。
遺族基礎年金
国民年金に加入している被保険者等が亡くなった場合で、一定の要件を満たしているときは、遺族に遺族基礎年金が支給されます。
受給できる遺族の範囲
死亡した人に生計を維持されていた子または子のある配偶者が受給できます。
子の要件は、18歳到達年度末日までの子、または、20歳未満で障害等級1級または2級に該当する子です。
保険料納付要件
原則、保険料納付済期間+保険料免除期間が全被保険者期間の2/3以上です。特例として、原則の要件を満たさない人は、直近1年間に保険料の滞納がなければ大丈夫です。
遺族基礎年金額
780,100円+子の加算額になります。
また、国民年金の第1号被保険者の独自給付として、寡婦年金や死亡一時金を受け取ることが出来ます。
寡婦年金
老齢基礎年金の受給資格期間を満たしているにもかかわらず、夫が年金を受け取らずに死亡した場合に、妻に支給される年金です。妻が亡くなった場合には夫には支給されません。また10年以上の婚姻期間がある妻でなければなりません。
死亡一時金
第1号被保険者として保険料を納付した期間が、合計3年以上ある人が年金を受け取らず死亡し、遺族が遺族基礎年金を受け取ることが出来ない場合に、遺族に支給される給付です。
遺族厚生年金
第2号被保険者が亡くなった場合で、一定の要件を満たしているときは、遺族は遺族基礎年金に遺族厚生年金を上乗せして受け取ることができます。受給できる遺族の範囲は、①妻・夫・子→②父母→③孫→④祖父母の順です。受給額は老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4相当額
一定の遺族には、中高齢寡婦加算や経過的寡婦加算があります。
中高齢寡婦加算
夫の死亡当時40歳以上65歳未満の子のない妻、または子であっても40歳以上65歳未満で遺族基礎年金を受け取ることができない妻に対して、遺族厚生年金に一定額が加算されます。ただし妻が65歳になると支給が打ち切られます。
経過的寡婦加算
中高齢寡婦加算の打ち切りにより、年金が減少するための制度をいいます。
まとめ
いかがでしたか?
上記の内容は「FPの教科書」を基に作成しております。
年度が変われば、それに応じて出題内容も変わるので、FP試験を受験する際は、最新年度の参考書を購入して勉強することをオススメします。
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