FP(ファイナンシャルプランナー)3級の出題範囲でもある生命保険について簡単にまとめていきます。
生命保険の仕組み
生命保険の基本用語
- 契約者
保険会社と契約を結ぶ人(契約所の権利と義務がある人)
- 被保険者
保険の対象となっている人
- 受取人
保険金等の支払いを受ける人
- 保険料
契約者が保険会社に払い込むお金
- 保険金
被保険者が死亡、高度障害の時または満期まで生存した場合に、保険会社から受取人に支払われるお金
- 給付金
被保険者が入院や手術をした際に保険会社から支払われるお金
- 解約返戻金
保険契約を途中で解約した場合に、契約者に払い戻されるお金
- 主契約
生命保険の基本となる部分
- 特約
主契約に付加して契約するもの(単独では契約できない)
生命保険の種類
生命保険には、死亡保険、生存保険、生死混合保険の3種類があります。
- 死亡保険
被保険者が死亡または高度障害になった場合に保険金が支払われる保険
- 生存保険
一定期間が終わるまで被保険者が生存している場合にのみ、保険金が支払われる保険
- 生死混合保険
死亡保険と生存保険を組み合わせた保険
保険料の仕組み
保険料算定の基礎
保険料は3つの予定基礎率に基づき算定されます。
予定死亡率
統計に基づいて、性別・年齢ごとに算出した死亡率
予定利率
保険会社が予め見込んでいる運用利回り
予定事業費率
保険会社が事業を運営するうえで必要な費用
保険料の構成
保険料は、純保険料と付加保険料で構成されています。
純保険料
保険会社が支払う保険金にあてられる部分です。また、純保険料は死亡保険料と生存保険料に分かれます。
- 死亡保険料
死亡保険金の支払いに充てられる部分です
- 生存保険料
生存保険金の支払いに充てられる部分です。
付加保険料
保険会社が事業を維持するための費用です。
配当金の仕組み
剰余金と配当金
保険料と実際にかかった費用の差益を剰余金といいます。保険会社は剰余金を財源として、契約者に配当金を支払います。剰余金が発生する理由には次の3つがあります。
死差益
予定より死亡者が少なかった場合に発生する利益
利差益
予定より収益が多かった場合に発生する利益
費差益
予定より経費が少なかった場合に発生する利益
配当金の支払いがある保険とない保険
一般的に配当金の高い保険の方が、配当金の支払いがない保険より高くなります。
有配当保険(3利源配当型)
死差益、利差益、費差益の3つから配当金が支払われる保険
準有配当保険
有配当保険の内、利差益のみから配当金が支払われる保険
無配当保険
配当金が支払われない保険
契約の手続き
告知義務
保険契約を申し込むとき、契約者又は被保険者は、保険会社が申込みを承諾するかどうかを判断するための材料となる重要事項について、保険会社定めた質問に答えなければなりません。これを告知義務といいます。
契約の責任開始日
責任開始日とは、保険会社が契約上の責任を開始する日をいい、申込、告知、第1回の保険料払い込みがすべてそろった日となります。
保険料の払込み
保険料の払込方法
保険料の払込方法には、一時払い、年払い、半年払い、月払いなどがあります。
保険料を支払わなかった場合の猶予期間
保険料を支払わなかった場合、すぐに契約が失効するわけではなく、一定の猶予期間が設けられています。
契約の執行と復活
執行
猶予期間を過ぎても保険料を支払わなかった場合、保険契約は効力を失います。これを失効といいます。
復活
一旦失効した契約を、一定期間内に所定の手続きを行うことにより、契約をもとの状態に戻すことが出来る場合があります。これを復活といいます。復活の場合、未払いの保険料を支払う必要があります。
必要保障額の計算
必要保障額とは、世帯主が死亡した場合に、遺族保障のために必要な金額のことで、死亡後の支出総額から総収入を差し引いて求めます。
主な生命保険~基本的なもの~
基本的な生命保険のタイプには、定期保険、終身保険、養老保険があります。
定期保険
一定期間内に死亡した場合に、死亡保険金が支払われるというタイプの保険です。保険料は掛捨てで、満期保険金はないため、ほかのタイプに比べて保険料が安くなっています。定期保険は4つのタイプがあります。
平準定期保険
保険金額が一定の定期保険
逓減定期保険
保険金額が一定期間ごとに減少する定期保険
逓増定期保険
保険金額が一定期間ごとに増加する定期保険
収入保障保険
保険金が年金形式で支払われる定期保険
終身保険
保障が一生涯続くタイプの保険です。満期保険金はありませんが、解約時の解約返戻金が多く、貯蓄性の高い商品です。
ただし、一時終身保険の場合、早期に解約すると解約返戻金が払込保険料を下回るため注意が必要です。
養老保険
一定の期間以内に死亡した場合には死亡保険金を受け取ることが出来、満期時に生存していた場合には満期保険金を受け取ることが出来るタイプの保険です。
主な生命保険~その他~
その他の生命保険のタイプには以下のようなものがあります。
定期保険特約付終身保険
終身保険を主契約とし、これに定期保険特約を付けることによって、一定期間の保証を厚くした保険です。定期保険の期間を、終身保険の保険料支払い期間と同じ期間で設定した全期型と、定期保険の期間を、終身保険の保険料支払い期間よりも短く設定した更新型の2つのタイプがあります。
利率変動型積立終身保険(アカウント型保険)
アカウント型保険は、支払った保険料を積立部分と保障部分に、一定の範囲内で自由に設定できる保険です。保険料払込期間が満了した後は、積立金を終身保険や年金に移行することが出来ます。
団体保険
団体保険は、団体が契約するタイプの保険です。終電加入するため、保険料は割安となります。
こども保険(学資保険)
子供の進学に合わせたい祝い金や、満期に満期保険金を受け取ることが出来る保険です。原則として、親が契約者、子供が被保険者となります。
親が死亡した場合は、それ以降の保険料は免除され、進学祝い金や満期保険金は当初の契約どおり支払われる点が、この保険の特徴です。
変額保険
変額保険とは
保険会社が株式や債券等を運用し、その運用成果に応じて保険金や解約返戻金の額が変動する保険をいいます。変額保険の資産は、定期保険の資産(一般勘定)とは別の口座(特別勘定)で運用されます。
変額保険の種類
変額保険には、一生涯保障が続く終身型と、保険期間が一定の有期型があります。いずれも死亡保険金と高度障害保険金には最低保証がありますが、解約返戻金や満期保険金には、最低保証はありません。
個人年金保険と変額個人年金保険
個人年金保険
契約時に決めた一定の年齢に達すると年金が受け取ることが出来るという保険で、年金の受け取り方によって次のように分類されます。
終身年金
生存している間、年金が受け取れるタイプ
保障期間付終身年金
保障期間中は生死に関係なく、保証期間後は生存している場合に、年金が受け取れるタイプ
有期年金
生存している間の一定期間、年金を受け取れるタイプ
保障期間付有期年金
保障期間中は生死に関係なく、保証期間後は生存している間の一定期間、年金が受け取れるタイプ
確定年金
生死に関係なく、一定期間、年金を受け取れるタイプ
夫婦年金
夫婦いずれかが生存している限り、年金を受け取れるタイプ
変額個人年金保険
保険会社が株式や債券等を運用し、その運用成果に応じて年金や解約返戻金の額が変動する保険をいいます。
年金支払い開始前に死亡した場合に受け取る死亡給付金には、一般的に最低保証がありますが、契約返戻金には最低保証がありません。
主な契約
病気やケガをしたときの保障として、生命保険に特約を付加することが出来ます。なお、特約は単独で契約することはできず、主契約に付加して契約します。したがって、主契約を解約すると、特約も解約されるようになります。
生命保険の主な特約には、次のようなものがあります。
災害割増特約
不慮の事故が原因で、180日以内に死亡または高度障害になったとき等に、保険金が支払われる。
傷害特約
不慮の事故が原因で、180日以内に死亡または所定の身体障碍状態なったとき等に、保険金または給付金が支払われる。
災害入院特約
災害や事故によるケガで180日以内に入院したとき、給付金が支払われる。
疾病入院特約
病気やケガで入院したとき、給付金が支払われる。
通院特約
病気やケガで入院し、退院後も治療のために通院をした場合に給付金が支払われる。
特定疾病保障保険特約
がん、急性心筋梗塞、脳卒中(三大疾病)の診断があり、所定の状態になった場合に、生存中に死亡保険金と同類の保険金が支払われる。
リビングニーズ特約
被保険者が余命6ヶ月以内と診断された場合、生前に死亡保険金が支払われる。
先進医療特約
療養時において、公的医療保険の対象となっていない先進的な医療技術の内、厚生労働大臣が施設で、厚生労働大臣の定める先進医療を受けたとき、給付金が支払われる。
契約を継続させるための制度、方法
自動振替貸付制度と契約者貸付制度
解約返戻金がある保険契約で、保険料の支払いが困難になった場合、自動振替貸付制度や契約者貸付制度があります。
自動振替貸付制度
保険料の払込みがなかった場合に、保険会社が解約返戻金を限度として、自動的に保険料を立て替えてくれる制度
契約者貸付制度
契約返戻金のうち一定範囲内で、保険会社から資金の貸付けを受けられる制度
払済保険と延長保険
保険料の払込みが出来なくなった場合には、以後の保険料の支払いを中止して契約を継続する制度(払済保険や延長保険)
払済保険
保険料の払込みを中止して、その時点の解約返戻金をもとに、一時払いで元の契約と同じ種類の保険に変更することをいいます。この場合、保険期間は元の契約と同じですが、保険金額は元の契約よりも少なくなります。また、特約部分は消滅します。
延長保険
保険料の払込みを中止して、その時点の解約返戻金をもとに、元の契約の保険金額を変えないで、一時払いの定期保険に変更することをいいます。この場合、保険期間は元の契約と同じですが、保険金額は元の契約よりも短くなります。また、特約部分は消滅します。
契約の見直し
保険解約の見直しの際、次のような制度を利用できます。
契約転換制度
契約転換制度は、現在契約している保険の責任準備金や配当金を利用して、新しい保険に加入する方法です。
転換の際には、告知または医師による審査が必要です。また、保険料は転換時の年齢、保険料率により計算されます。
増額・減額
現在の保険金額を増額したり、減額することもできます。特約を付加する場合、特約の保険料は付加時の年齢で計算されます。
生命保険と税金
生命保険料を支払った時の税金(生命保険料控除)
1年間に支払った保険料は、金額に応じて生命保険料控除として、その年の所得から控除することができます。
生命保険料控除
平成23年12月31日以前とそれ以降で、締結した契約の区分及び控除額が異なります。
旧契約の場合、保険料の年間支払いが10万円以上で5万円の控除となります。
新契約の場合、 保険料の年間支払いが8万円以上で4万円の控除となります。また新契約は、身体の障害のみに基因して保険金が支払われる契約に関わる保険料は生命保険料控除の対象外である。
個人年金保険料控除が受けられる保険契約
下記の要件を満たした個人年金保険に加入している場合には、一般の生命保険料控除とは別枠で、同類の控除が受けられます。
- 年金受取人が契約者か配偶者であること
- 年金受取人が被保険者であること
- 保険料の払込期間が10年以上であること
- 確定年金・有期年金の場合は、年金受給開始日の被保険者の年齢が60歳以上で、年金受取期間が10年以上であること
生命保険金を受け取ったときの税金
保険金を受け取った場合、契約者、被保険者、受取人が誰かによって、課される税金が異なります。
死亡保険金の課税関係
受取人のみ異なる場合
相続税が発生します。
被保険者のみ異なる場合
所得税と住民税が発生します。
全て異なる場合
贈与税が発生します。
満期保険金の課税関係
契約者と受取人が同じ場合
所得税と住民税が発生します。
契約者と受取人が異なる場合
贈与税が発生します。
非課税となる保険金や給付金
下記のものについて、受取人が本人、配偶者、直系血族、あるいは生計を一にする親族の場合には、非課税となります。
- 入院給付金
- 高度障害給付金
- 手術給付金
- 特定疾病保険金
- リビングニーズ特約保険金
など
法人契約の保険
法人(会社)が契約者、従業員や役員が被保険者となる保険を法人契約の保険といいます。
事業必要資金の準備
中小企業は、経営者が死亡すると、会社の信用力が低下し、経営の存続が困難になる場合があります。そのため、必要資金を準備する必要があり、次の計算式で求められます。
事業必要資金=短期債務額+全従業員の1年分の給料
法人が支払った生命保険料の経理処理
法人が支払った生命保険料は、保険の種類および契約形態によって経理処理が異なります。
例えば、定期保険や特約は損金算入(経費に計上)で、養老保険や終身保険は資産計上(経費にできない)になります。
1/2養老保険
養老保険の内、一定の要件を満たしたものは、支払保険料の2分の1を損金とすることが認められます。これを1/2養老保険といいます。
長期平準定期保険
一定の要件を満たした、期間の長い定期保険をいいます。期間も長く、終身保険に近い保障となるので、一般の定期保険とは異なる扱いがされます。
法人が受け取った保険金等の経理処理
法人が保険金を受け取った場合には、全額「雑収入」として益金に算入され、法人税の課税対象となります。ただし、その保険料が資産計上されている場合には、保険金から資産計上されている保険料を差し引くことが出来ます。
まとめ
いかがでしたか?
上記の内容は「FPの教科書」を基に作成しております。もっと詳しい内容が知りたい方は、是非ご購入ください。
コメント